西沢大良氏が学生に向けて近代建築と近代都市の起源について語り下ろしたツイートのまとめを掲載します。2014年5月14日の早朝に展開されたもの。
学生の皆さんへ:
あのね。近代建築や近代都市について、鉄やコンクリなどの工業化(重工業)から説き起こす人いるでしょう。日本のモダニストがそうです。あれは小ズルイ説明だから、騙されちゃダメです。問題は重工業以前の段階にあるんだから(軽工業)。しかも軽工業以前も問題ありまくりだから— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→軽工業ってのは18〜19cの繊維工業のこと。あれがスラムをもたらしたわけで、ゆえに近世都市を続けられなくなり、ゆえに近代都市と近代建築を発明せざるを得なかった。軽工業は、都市現象としてはスラムに対応する。それをなかったことにしたい建築家が、重工業(鉄とコンクリ)から話を始める。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→彼らはスラムクリアランスに成功したと主張する。でも、実際には全く成功してないんですよ。それを無視できなくなったのが1970年代なんですよ。英国の公営住宅は70年代に、いち早く新手のスラムに戻ったね。戻ってなければパンクもニューウェーブもないです。新自由主義も出てきてないです。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→2011年のロンドン暴動はアンダークラスの暴動です。英国のミドルクラスはほとんど崩壊してる(格差社会)。日本の年越し派遣村や、NYのオキュパイWSも別の意味でそう。G7では賃労働ができなくなっている。だからベッドタウンが新手のスラムになる。スラムクリアランスは成功していない。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→重工業から始める建築家、そしてスラムクリアランスに成功したと主張する建築家は、近代都市・近代建築の無能さを誤摩化しているのです。実際には、代都市計画が繰り出されればされる程、また近代建築が作られれば作られる程、格差社会も広がり、スラム問題の解決も遠ざかる。それが今のG7の姿です
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→もともと軽工業をもたらしたのは近世の重商主義。あれは商人資本と絶対主義の結託です。だからブラック企業や非正規雇用も続出しました。そんで当時なりのグローバリズムもやりました。当時なりの世界戦争もやりました。似たことが今起きているのです。だから重工業以前(近世)が大事なのです。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→これはね。マルクス主義じゃあないんだよ。マルクスは近世イギリスをしつこく分析したけど、それ以外にまともな近世の分析がないんだもの。マルクスの用語を使うのは、他の学者が役に立たないからで、マルクス主義者だからじゃないです。選択肢があればそっちを使います。選択肢を出してください。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→重商主義から産業資本主義へ、絶対主義から制限民主主義へという趨勢が、最終的に両大戦に行きつくことは、西欧ではマルクス主義者どころかネオナチでも言ってます。マルクス主義を拒否するために近世を無視する人がいるからね、騙されちゃダメです。それでは近代都市・近代建築の発生は理解できない
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
学生のみなさんへ 2:
あとね。グリッドだから近代都市だっていうのは、おかしな話です。グリッドは近代都市とは関係ないです。近代建築とはちょこっと関係あるけど、近代都市とは関係ない。グリッドは、強いて言えば古代都市と近世都市。近世都市は、日本でも中南北米でも西欧でもグリッドですね— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→シカゴグリッドだってボストンだってみんな近世都市計画ですよ。西欧圏でも近世に整備されたエリアは、ナポリでもどこでもたいていグリッドです。日本の城下町もグリッド。だとしても、基本的にグリッドみたいな道路線形で都市の時代を特定しようとするのは、間違いです。古代都市もグリッドだもん。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→だからまあ強いてグリッドに拘るなら、より専制度が高く、より更地度が高く、より強引な計画力があると、グリッドシティになるって言える程度です。いずれにせよ近代都市の本性は、グリッドにはないです。むしろ近代都市の特徴は、そこがグリッドであれ何であれ、ところ構わず成立することにあります
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→だから、セルダのバルセロナプランを近代都市計画の誕生だと言うのは、おかしな話です。あれはフェリペ2世様式の、ガチンコの近世都市計画です(スパニッシュグリッド)。グリッドシティを中南米で何百年と量産してきた連中が、自国(ただしカタロニア)にたいして同じことを振り向けたんですよ。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→だいたいセルダの時代のスペインでは産業資本主義なんて始まってないです。それが1970年代までファシスト政権をスペインで続かせた原因だもの。今でもスペインは産業資本主義を通過したかどうか怪しいですよ。リーマンショックでスペインがやられた原因はそこにあるんでしょう。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→つまり今でもスペインでは産業資本主義が弱いから、ついつい商人資本的になってしまう。いまだにポトシ銀山みたいな宝の山を探してしまう。近世的な発想からどうしても抜け出せないっていうのが、今のスペインの問題でしょう。それはセルダの頃から変わらないんでしょう。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
学生のみなさんへ 3:
そのセルダが批判したオスマンのパリ改造を、近代都市の起源だとする説をたまに目にするけど、それもおかしな話です。フランスでは産業資本主義は始まってるんだけど、都市を見るならそれだけじゃダメだもの。主権の問題がありますからね。— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→オスマンのパリ改造は、近代都市を整備すべき段階なのに近世都市モドキ(スペイン型でなくルネッサンス型)を整備したという典型です。それがバロック式都市計画の正体です。それはその後全体主義国家で繰り返されました。ナチスのベルリン計画、スターリンの社会主義レアリズムも広義のバロック式。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→ようするにオスマンのパリ改造は、近代都市計画の起源ではなくて、全体主義国家の都市計画の起源です。ナポレオン3世やヒットラーやスターリンは、近世と近代を区別できなかったのです。あいかわらず絶対主義で行けると思ってしまって、近世都市モドキ(ルネッサンス型)で行けると思ってしまった。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→そういう主権者が登場すると、都市がバロック式になる。毛沢東も同じです。80年代までの中国の都市整備がやたらとバロック式なのはそのせいです。明治帝も同じ。いまザハで騒いでる国立競技場のあたりはバロック式ですね。明治帝に関するエリアは、日比谷公園とか丸の内とかもバロック式です。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014
→以上の話は、どんな本にも書いてないけど、わかりやすい説明だと思うんですよね。こんな簡単な話を、どうしてサクっと言わないかなあ〜。重工業から説き起こそうとするからですよ。近世を軽視してるからですよ。そんなことでは近代都市の本性はわからないですよ。
— 西沢大良 (@tairanishizawa) May 13, 2014