著・訳 榊原充大(RAD)、編集 和田隆介、デザイン 西村祐一(rimishuna)による書籍「LOG/OUT magazine」を紹介します。
創刊号となるver.1.0「VOLUME STUDIES1–10」では、レム・コールハース/AMOやジェフリー・イナバ/C-LABらといった建築シンクタンクが届けるオランダの建築雑誌「Volume」が対象となっています。
2016年で10周年を迎え、現在的な社会/政治/経済/文化的状況における建築を問い続けている「Volume」から「ブロードキャスティング・アーキテクチャー(3号)」「権力の建築(5から7号)」「遍在する中国(8号)」「アジテーション(10号)」など、テーマの問題意識を謳う序文の翻訳と、翻訳者である榊原充大の解説・批評をまとめた一冊です。

こちらの書店で購入可能です。
http://logoutproject.tumblr.com/howtoget

 

 

 
A5サイズの分冊「VOLUME STUDIES」がひとつのプラスティックケースに入っています。『Volume』1号から5号も同様に、ニューヨークのデザイナー2×4によってデザインされたプラスティックケースに「付録」とともに梱包されていました。

参考:『Volume』2号「Doing ( almost ) nothing」特集号

 

 
VOLUME STUDIES10冊のそれぞれは、『Volume』本誌各号に対応しています。各号のコンテンツに対し、テーマ、文体、構造、紙面などから要素を抽出した異なる10のデザインがなされています。

 
『LOGOUT magazine ver.1.0 — VOLUME STUDIES1–10』
http://logoutproject.tumblr.com/

著・訳:榊原充大(RAD)
編集:和田隆介
デザイン:西村祐一(rimishuna)
発行:RAD
定価:2000円(税別)


以下、著・訳者である榊原充大の文章です。

LOGOUT FOR ACTIONS
榊原充大

「LOG/OUT」は次なる行動を起こすことを目指したプロジェクトだ。生活のあらゆる細部にまでシステムの網の目が覆っている中、そこからの「ログアウト」など果たして可能なのか。それはひとつの比喩であるが、それ自体に現在的なユートピアを見るようでもある。そんな「LOG/OUT」プロジェクトの第1弾として今回取り扱うのは、オランダの建築雑誌『Volume』だ。現時点で46号まで刊行され、建築と社会との関係性を多様に問うている。今回は1号から10号まで取り上げ、各号のテーマを解説する序文を紐解き、次なる行動のヒントになるコメンタリーをつけた。

『Volume』は、2005年に3つのシンクタンクによって創刊されている。1929年から続く建築雑誌『Archis』を刊行していたArchis。レム・コールハース率いるOMAと並走するAMO。そして元AMOのジェフリー・イナバ率いるC-lab。いわば彼らの存在自体が建築に携わる職能の幅広さを示している。「Doing(almost)nothing」「Contents Management」「Self Building City」など、毎号設定されるテーマが独特。のみならず、その特集序文の批評性やユーモアの強度が高いことに驚かされる。いわば『Volume』だからこそ、序文だけを抽出して束ねることで読み物としての価値が生まれると考えた。特定の雑誌の序文とコメントだけからなる出版物という特異な形式はその成果である。

『Volume』のテーマそれぞれに通底するのは「社会的な状況に対して建築の側からどういう応答がなせるのか」という問題意識だ。ときに建築とは縁遠く感じるような語を選択することよって、建築批評そのものから、「建築のインパクト」が問われるようなソーシャルエンゲージメントの活動まで多様な話題が俎上に上げられる。描き出されているのは、いわば「建築というフィルターを通して見えてくる社会的状況」の多様なシーンだ。一時期広く議論されていた「建築の社会性」なるものは一般論として語りづらく、むしろ具体的な状況とともに検討されるべきだと私は考えるが、そのための重要なガイドになる。建築がいかなる社会性を持ち得るのか、ということよりも、ある社会的状況に対して建築の側からはいかなる貢献がなせるのか。こういう考え方がより重要になるだろう。

『Volume』の大きな問題意識として、建築家という職能がいかに「拡張」されるか、がある。こうした問題を考える際語られるのは、「建築家は建築設計だけをおこなうべきではない」ということだ。続けて、「設計だけのニーズはなくなっていく」「建築をツールとした社会貢献などもおこなうべし」といった煽りが来る。私はこうした論を批判しない。むしろ、『Volume』の背に書いてある「beyond or not to be」の、その二項対立的比較をこそ「beyond」すべきだろう。両者は複数の人格に担われればよく、その2つのモードの適切なバランスを取る存在が求められるとも言える。それはケース・バイ・ケースになされるべきで、それゆえ『Volume』の多様なテーマが用をなす。

ある取り組みの意義を多様な側面から検討することを批評と呼ぶならば、「LOG/OUT」は批評の場であり、その場に集う人が増え、そこでまた新たな行動が生まれてほしいと考えている。「ログアウト」とはただコンピュータの電源を切ることを意味するのではない。あるシステムからの切断を意味するこの言葉に、新たなシステムへの接続の希望を込めたい。「LOG/OUT」はそのためのプラットフォームだ。


また「LOG/OUT magazine」の創刊を記念し、広島のREADAN DEATにてトークイベントが開催されます。
著者と編集者、デザイナーがそれぞれの観点から執筆・編集・デザイン・出版のプロセスを語る興味深いイベントですので、是非ご参加ください。

「LOG/OUT tour 2016, Hiroshima」

『LOG/OUT magazine』創刊記念トークイベントを開催します。

既存のシステムを乗り超えるための次なる行動のプラットフォームを目指す『LOG/OUT magazine』。創刊号であるver.1.0は「VOLUME STUDIES1–10」と題して、オランダの建築雑誌『Volume』1号から10号の序文訳と、訳者による解説をまとめています。

トークイベントでは、執筆・編集・デザイン・出版のプロセスを、著者・編集者・デザイナーそれぞれの観点から紹介します。その後、著者の榊原充大より、本誌の内容を補足するような、海外における最新の建築・都市リサーチを軸にした多様な活動主体をまとめたショート・レクチャーをおこないます。

LOG/OUT tour 2016は、この雑誌をより広く知っていただくために、製作メンバーの3人が本誌を解説しながら日本全国を回りたいツアーです。広島はその第一弾。

日時:2月6日(土)19:00-(18:30開場)
入場料:2000円(『LOG/OUT magazine』1冊プレゼント)
※すでにお持ちの方は、持参いただければ入場料500円です
会場:READAN DEAT(広島県広島市中区本川町2–6–10 和田ビル203)
※詳細や申し込みはこちらからどうぞ
http://readan-deat.com/2016/01/logout_tour/


『LOG/OUT magazine ver.1.0』目次

0:LOG/OUTによる「はじめに」
Preface by LOG/OUT

1:超越する
To go beyond

2:(ほとんど)なにもしない
Doing (almost) Nothing

3:ブロードキャスティング・アーキテクチャー
Broadcasting Architecture

4:ブレイクスルー
Break Through

5:アーキテクチャー・オブ・パワー1─権力は細部に宿る
The Architecture of Power 1: Power is in the details

6:アーキテクチャー・オブ・パワー2─パワー・ビルディング
The Architecture of Power 2: Power Building

7:アーキテクチャー・オブ・パワー3─パワー・ロジック
The Architecture of Power 3: Power Logic

8:ユビキタス・チャイナ
Ubiquitous China

9:崩壊のあとの郊外
Suburbia after the crash

10:煽動!
Agitation!

取り扱い書店

北海道、宮城、東京、長野、愛知、京都、大阪、兵庫、広島
ジュンク堂、丸善、その他書店にて販売
http://logoutproject.tumblr.com/howtoget

プロフィール

榊原充大|建築家/リサーチャー
1984年愛知県生まれ。2007年神戸大学文学部人文学科芸術学専修卒業。建築に関する取材執筆、物件活用提案、調査成果物やアーカイブシステムの構築など、編集を軸にした事業をおこなう。2008年には、より多くの人が日常的に都市や建築へ関わるチャンネルを増やすことをねらいとし、建築リサーチ組織RADを共同で開始。RADとして建築展覧会、町家改修ワークショップの管理運営、地域移動型短期滞在リサーチプロジェクト、地域の知を蓄積するためのデータベースづくりなど、「建てること」を超えた建築的知識の活用をおこなう。同組織では主として調査と編集を責任担当。寄稿書籍に『レム・コールハースは何を変えたのか』[2014]。

和田隆介|編集者
1984年静岡県生まれ。2008年明治大学理工学部建築学科卒業。2010年千葉大学大学院工学研究科修士課程修了。2010–2013年新建築社。JA編集部、a+u編集部、住宅特集編集部に在籍。2013年-フリーランスとして活動をはじめる。2013–2014年東京大学学術支援専門職員。2015年より京都工芸繊維大学特任専門職員。

西村祐一|グラフィックデザイナー
1985年兵庫県神戸市生まれ。2007–2009年藤村龍至建築設計事務所勤務。2011–2014年neucitora勤務。2015年より京都工芸繊維大学特任専門職員、rimishuna を開始。


posted by Shin Yamashita