京都文化博物館にて2016年2月18日より2月21日まで行なわれた、京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 デザイン学専攻の修了制作展の様子と、その中から作品を3点紹介致します。

 

 

 

 

「私たちに身近などうぶつたち」by Masashi Kubo 動物への倫理観という扱いの難しい問題をコミカルとリアル、2つのタッチを利用して効果的に伝えた作品。
「Selests」by Taku Ito ユーザーが選択した7つのアイテムから構成されたボードを通して、自分の趣味嗜好の合う人や製品と出会うためのサービスの提案。
「3D forming study with chrome leather」by Saki Kudo 工芸品としてタンニン革が得意としていた立体成形を量産に向くクロム革で行なう手法を摸索し、プロダクトとして提案した作品。

 

2/19には外部審査員を招き、会場にて公開講評会も行なわれた。

昨年の展示に比べ、素材の制作方法探求やリサーチから行なわれたサービスの提案、スタートアップとの恊働といった社会との接点を摸索した作品が増加したように感じました。

以下、展示で気になった3つの作品の紹介です。


 
吹き付け和紙の新たな表現の開発 by Mika Tsutai
プロダクトデザイン専攻 津田井美香による近年開発された建築用素材『吹き付け和紙』を用い、プロダクトに落とし込んだ作品。塗料のように吹き付けることで継ぎ目なく和紙を制作出来る技術を利用した紙だけで自立する器や、生乾きのときに敢えて型を収縮させることで生み出した“しわ”をテキスタイルとして取り入れた鞄など5つのプロダクトで構成されています。

 

 

 

 

 
吹き付け和紙で表面が作られたポーチ。偶然性に左右されるしわを用いた形状を取り入れることで、量産品でありながら自然物のような美しさを併せ持ちます。

 

 
和紙は手触りや風合いに美しさを持ちながら、漉いた型によるサイズ規定や継ぎ目などプロダクトに向かない欠点もある素材です。この欠点を覆す『吹き付け和紙』の利点を盛り込みつつ、この技術を発展させて自分の表現にまで昇華させた意欲的な作品です。


 
nijimi -colored grooves- by Hitomi Nakatani
プロダクトデザイン専攻 中谷仁美による表面に細かな傷をつけたアクリル板にインクを流し込み、生まれたにじみを表現として取り入れた作品。レーザーカッターで作成した細かな溝にインクを流し込むことで毛細管現象を起こし、表面に描画法『たらし込み』に似た新しいテクスチャが生まれています。

 

 

 
“にじみ”の制作過程とパターン。表面に彫り込まれたパターンとインクを流し込む位置を操作しながら、毛細管現象で「完全に操作出来ない美=自然界の美しさ」をプロダクトに取り込もうとしています。

 

 

 
展示されていた眼鏡、ローテーブル、器はどれも同じ表現を用いながら1つとして同じものがありません。またパーソナルファブリケーションの主役、レーザーカッターが表現ではなくツールとして有益に使用されている制作過程の面白さもある作品です。


 
Font Pattern by Kanae Tsuchida
グラフィックデザイン専攻 土田佳苗によるフォント入力ツールの機能「カーニング」を利用したパターンデザインの研究。カーニングで文字の字間や行間を調整するように、リピートを細かく調整することでパターンを精緻にデザインしています。

 

 
同じ図形の反復を用いながら、配置を変更することで印象の異なるパターンが生まれています。

 
図形をフォントとして認識させ、文字ツールのように操作することで、図形を変更すると同じ配置で全く異なるパターンが作成可能となり、各パラメータを少しづつ調整することで制作者も思いのよらない美しいパターンを発見することが出来ます。
数式や変数を調整することで様々な図形を生み出す「パラメトリックデザイン」の面白さをグラフィックパターンに取り入れた、新しい流れを感じさせる作品です。


posted by Shin Yamashita.