POTLUCK DESIGN TABLEは、最前線で実践するデザイナーたちが「今おもしろい」と感じるデザインを持ち寄り、それについて語ることからこれからのデザインの方向性や可能性を探っていくトークシリーズです。第一回目は、DIYをスタイルではなくある種の方法論として捉え、意識的にデザインとものづくりを連続させているGELCHOP、DAYS.、studioBOWLの3組に話を聞きました。

【ゲストスピーカー】
– 西尾健史(DAYS.)
– 村上諒平(studioBOWL)
– モリカワ リョウタ(GELCHOP)

聞き手:川勝真一(RAD)、元木大輔(daisuke motogi architecture)、飯田将平(ido)

 


<プレゼンテーション>

西尾健史(DAYS.)

桑沢デザイン研究所卒業後、設計事務所を経て、「DAYS.」として独立。空間をベースに机と作業場を行き来しながら家具、インテリアのデザイン、及び自身での制作を行っている。http://on-days.com

西尾:自身でデザイン、制作、施工もやっています。単にDIYが作業にならないように、コンセプトだけでなく、素材からテーマやルールを見つけていくということを意識して制作しています。空間の場合は、プランニングも全てやっています。

《ONLY NEWS PAPER》という新聞紙を集めた展覧会の会場構成を行いました。扱うものが本でも通常の物販とも違うので、新聞紙でしかできない空間の見せ方ができたらいいなと思いました。新聞と同じく再生紙からできている段ボールを使って、新聞を掛ける為の什器を作っています。会期後も使うことが出来るように、接着剤は使用せず、それぞれのパーツを差し込むことで自立する構造を考え、デザインしています。

《ONLY NEWS PAPER》

次に、ピクセルブランドとパックマンのポップアップショップ《TOKYO PIXEL》です。パックマンを商材にした商品が、まるでパックマンのゲームの世界のなかにいるみたいにディスプレイしたいと考えました。ゲームのパターンを自身で組み替えてパターン化し、板に印刷し、平面を立体的に組むように空間を立ち上げています。ゲームが飛び出してきたように、商品を陳列できたり、什器自体にもハンガーをかけることができるようになっています。

《TOKYO PIXEL》

ファッション、テキスタイルデザイナーのスタジオ《Yuki Fujisawa Studio》の改修です。什器を作りました。古着のセーターに箔を押すことで、目に見えない記憶のようなものをテキスタイルとして表現しているデザイナーなので、この手法と同じように什器もつくれないかと考えました。そこで、使用する板材(OSB)に箔を転写し、残った泊を小口テープに転写することで、不思議な質感のある什器をつくりました。仕上げの指示が出来る塗装や素地というよりは、自分なりにできるコンセプトに合った加工をこの辺から意識してやるようになりました。

《Yuki Fujisawa Studio》

仕事では、実際にホームセンターへ行き、材料を買い、製作し、破棄するまで関わります。これを繰り返していくと、作ったものを会期後にお金をかけて捨てるのがやるせなく感じ、一連のプロセス自体をどのようにするかを考えるようになりました。

 

《CRAZY KIOSK》というポップアップのキオスクをつくったプロジェクトです。このキオスクはボンドで留めたグレーの厚紙で出来ています。当初ドンキホーテのような圧縮陳列(ダンボールが什器としてそのまま積んである)のように見せたいと頼まれました。そこで架空の梱包箱を数種類作り、この箱を積み上げて什器にしようと思いました。この箱は会期が終わると、実際に一部梱包箱として使われました。また、紙なので燃えるゴミとして捨てられるのも大きな特徴です。全体の予算を考えて、会期後に破棄するという行為も条件としてデザインしています。

《CRAZY KIOSK》

次は、タオルのブランドの為につくった什器です。タオル掛けのラックの構造やイメージを応用して、違う什器ができないかと考えました。棚のバージョンや、ハンガーのバージョンもつくりました。この什器は折り畳んでどこでも持っていけるので、気に入っています。ポップアップの場合は、設営時間や搬入費等に余裕が無いことが多いので、なるべくコンパクトで簡単に組み立てられるということが重視されます。今はこの什器をオリジナルのプロダクトとしてつくっているところです。

《Accordion Rack》

 

 

村上諒平(studioBOWL)

家具、空間、人、それら空間要素を混ぜ合わせる入れ物としての”BOWL”また、異素材同士を掛け合わせる制作スタイルとしての”BOWL”をコンセプトに、家具制作 内装、店舗、ディスプレイデザインまで幅広く活動。https://www.studiobowl.com

村上:2012年に武蔵野美術大学を卒業して、それからずっとフリーで仕事をしています。設計はできないので、直感で動き、設計をしないことを前提に内装の仕事をしています。現場では、その場その場で材料を加工し、その場で判断してきます。設計図があると、変更がある度にクライアントに確認しなければならないのが嫌で、最初に感じたフィーリングを大事にしたいと思っています。つくっていて、その場その場で感じることが大きく、変更あるごとにクライアントに聞くことでできるタイムロスがすごくいやなので、予想パースの完成像とは一緒のものができませんよという前提で仕事をしています。

もともと、油絵科に属していましたが、1年目で絵を描くのをやめました。当時はグラフティがすごく好きで、廃品を集めそれにグラフティを描くインスタレーションのような作品をつくっていました。卒業後、それでは食べていけないので、オブジェとしてつくっていたインスタレーション作品を、家具に落とし込めないか考えるようになりました。当初は、リサイクルショップを回り、相性の良さそうなものを組み合わせ、キャビネットやスツールをつくっていました。そうしているうちに徐々に内装の仕事が来るようになってきました。立体物をつくる延長で、家具をつくっていますが、立体物を平面的にみることが多いです。いちばんかっこいい平面をつくるような感覚です。

《Original works》

台東区にある仮面の専門店のデザインと施工をしました。基本的に合板を使うことが多いのですが、このときはラワン縛りで、電気工事から内装までセルフでつくっています。大正時代からの長屋で2階にあった木の梁がグリッドになっていたので、そのグリッドに対して蛍光灯を置いています。

《仮面屋 おもて》

青山にあるデザインオフィスの内装です。最初にラーチのベニアを50枚ほど現場に搬入し、その場で材料を加工し、1週間ぐらいで什器をつくり仕上げました。棚やカウンターテーブルだけでなくヘリボーン張りの床もすべてやっています。

《Design Office 301》

香港の会社が赤坂にあるオフィスのレセプションをつくってほしいという依頼を受けてつくりました。クライアントからの要望がほぼなかったので、つくりたいものをつくらせてもらっています。会社のロゴから感じたスピード感から、バスケットボールのゴールネットを使ってスポーティなものにしました。

《FASTxReception desk for Office Akasaka》

基本的にお客さんのことを考えることがスタート地点にはなく、コンセプトから考えることもしていません。面白いと思ったもの、この素材を使ってみたいということをスタートにしている仕事が多いように思います。なので「これをつくってください」という依頼はほとんどありません。「村上さん、何かつくってもらえませんか?」という「何か」から考える仕事が多いです。その「何か」に対して、その時々の自分の流行やブームで素材を選び、実践しながら実験し、その上で確実に仕上げるというのが仕事のスタイルです。

 

 

モリカワ リョウタ(GELCHOP)

GELCHOP:2000年に結成。モリカワ リョウタ、オザワ テツヤ、タカハシ リョウヘイ、3人の工作好きによって活動を続ける3D造形グループ。ハンドワークで、イメージと現実の世界をつなぐ、立体というカテゴリーのもと、多岐に渡って活動。パブリックスペースのアートワーク、オリジナルプロダクト、はたまた、玩具、農作物、車、建築、エネルギー、コミュニティーにいたるまで、”つくる”ということを”D.I.Y.“精神をもって探り、手を汚す日々を過ごす。http://www.gelchop.com/

モリカワ:美術大学を卒業後、就職せずなるべく働かずに生きていく方法はないものか模索していました(笑)。社会不適合な芸術家に憧れ、作品制作とぶらぶら旅を繰り返す風来坊のような感じだったと思います。とは言え時折、造形屋さん(ディズニーランドなどにあるような造形物をつくる仕事)などで社会勉強もしていたのですが、僕が面白いと感じるつくる仕事は、お金が中心の世の中ではヒエラルキーの末端になるのだと感じ悲しくなりました。つくる側が考え、デザインやアイデアを提案するダイレクトな方法が、意外と一般的ではないと感じ、より明確に自分のスタンスに気付くことができたように思います。また、当時アパレルブランドの先輩達と交流する機会が増え、ぶっとんだアイデアをきちんと商売にする姿に衝撃を受けました。そこから自分達なりの方法論でできるオリジナルのプロダクトをつくることを始めていきました。

GELCHOPをスタートさせた当初は、FRPという素材をよく使いました。他素材と違い素材の特性でカタチが決まるのではなく、イメージに対して自由にカタチを変えることのできる素材です。設備も初期投資も少なく型をおこせるので、自分たちのスタンスに合わせ小ロットでの量産も可能です。この素材を使って切り株のスツールをプロダクト化したのが最初でした。価格至上主義にならぬよう、つくり手としてリピートできるギリギリの価格を目指してつくっていました。また、日本の住宅でよく見かける本物のような偽物の建材が、なんとも貧乏臭いなと思い、偽物は偽物らしくというコンセプトで板材や角材といったフェイクの建材などもつくりを始めました。どれもライブでカタチをおこし、手描きの線と指の幅で溝をおこし、つくる側なりのデザインの手法でカタチにしていきました。これがおよそ15年くらい前です。

《Wood land series “KIRIKABU”》

樹脂での制作は大変手間がかかるので、もっとスピード感を持って制作できることをやろうということで、ホームセンターの既製品に手を加えたり、組み合わせたりして、既存の意味や用途にイタズラをするという展覧会を2009年ぐらいから数度に渡り開催しています。制作にもアイデアだしにも時間を掛けず、1ヶ月ほどの期間、3人で7、80点の作品をつくりました。ホームセンターで使えそうな商品を買い漁り、大喜利のように1日1つカタチにするようなスタイルでつくっています。既製品の用途や意味を利用し、ロジックを組んでから、カタチをつくるという感じです。

《D.I.Y.シリーズ》

という感じで、人のためにならないものばかりつくっています。自分たちを世の中とコネクトする方法として、なるべく自身のひねくれた部分を素直に出すことを心がけています(笑)。アイデアがバカバカしいので、子供のお遊びにならないようにクオリティは大人としての仕上がりに、雑な対話にならないように気を使っています(笑)。

空間的な仕事でいうと、最近はブルーシートで小屋をつくりました。KRAFT PUNKというコンセプトで集めたアイテムを展示するスペースです。ここではブルーシートのイメージで遊ぼうと思って、その道50年の職人さんに頼んでブルーシートの布団貼りということを試みています。

《KRAFT PUNK》

これはsacaiというファッションブランドのインテリアです。MA-1とレース編みとか、ニットの背中がフレアドレスだったり、相反するイメージをハイブリッドして表現するブランドです。インディペンデントなスタンスでありながら、ハイブランドと同じスペースに店舗を構えることが多く、生まれて初めて「エレガント」という言葉を突きつけられました。エレガントに遊んでくださいということで悩みに悩み、ヴィンテージの家具とアクリルなどの異素材を組み合わせるということをしています。

《sacaiインテリア》

元木:みなさんのように自分でつくっていると、最後どのビスでとめるかみたいなところに責任を負わないといけない。デザインだけしているとむしろビス跡をパテで消したりする。そのどのビスを使うか、はたまた別の方法でとめるかが、表情に反映してくるのがおもしろいと感じました。表層と構造が反転しているところがおもしろいなと思います。

モリカワ:生身でカタチに向き合ったときにどう感じるか、つくっている人にしかわからないところも多々あると思うので、そこから何かおもしろい発想が生まれることはあると思います。

西尾:意匠として過剰にビスを打ったりしますね。必要ないのに(笑)。

川勝:ありがとうございます。ここからは、今日持ち寄ってもらった、面白いと思うデザインについて聞いていきたいと思います。

 


<おすすめ紹介>

行為によって生まれる価値


西尾氏おすすめ:《PAINTED CREDENZA》JEFF MARTIN JOINERY
(参照:http://jeffmartinjoinery.ca/PAINTED-CREDENZA)

西尾: DIYでモノをつくっていると、考えたり組み立てるときはおもしろいですが、塗装をするとなると、完成系に向けて何度も同じことをしなければならなくて、つまらなく感じてしまいます。これは、途中で止めたり、手数を減らすことで、価値がでるところに面白さを感じました。図面には描けないことや、人に指示出来ないことは自身で行い、モノの価値が高めれたらと思っています。

モリカワ:「なまめかしさ」はすごく大切だと思っていて、イメージだけでモノができてくると、生っぽいところがなくなりますね。

西尾:プロジェクトによっては、自分でも少しやり始めていて、貼り物や塗りを駆使して、図面では描けない仕上げ(デザイン)を意識しています。家具を組む段階については、ある程度構造や強度によって答えが決まっている。そこに面白さを見出すより、行為によって生まれる価値にアプローチしたい気持ちがあります。

元木:大量生産的ではないという話であれば、そこにもいろいろな種類があると思います。例えば、西尾さんの最初の写真だと重要なのはマチエール(表面の肌合い)じゃないですか。絵画的というか、個性が必要になってくる。でも、もう少しクラフト寄りになると大量生産だけど、手仕事の跡があるものもある。そこはグラデーション状に繋がっているように思います。人の生産力とモノの質感のバランスはどうお考えですか。

西尾:プロダクトの場合で言うと、ワンオフとしてというよりは、大量生産となったとしても、陶器の釉薬やぬいぐるみの顔のように一つ一つ少し異なり、それにどこか愛着が湧くような仕上げや佇まいに興味があります。実際の量産化に関しては自分ではあまり考えておらず、今は好きだからやる、誰もやってないのでまず自分でやってみたいというのが強いかもしれません。依頼があれば考えますが、そのときには自分が飽きてしまっているので違うことを考えてしまうと思います。

モリカワ:どう商品に落とし込むかというのがむずかしいところですよね。つくる時点で思いが溢れているので、その先のことを考えてしまうと、つくるのをやめてしまいますね。

西尾:これつくってくださいというのが、すごく嫌です(笑)。モチベーションを上げて、勢いを持って作りたいです。

元木:少し思い出したのですが、ポスタルコというブランドがだしているWHEEL PRINTED LEATHER(http://postalco.net/products/100WP/)というシリーズがあります。レザーの財布などにチェック模様を印刷したシリーズなのですが不規則で、手の痕跡のある線で毎回、少しずつノイズがあり、柄がずれたりする。クラフトとマスプロダクツのハイブリッド感があって、考えかたとしては似ているのかもしれません。

西尾:絵を描くような感覚やフリーハンド家具がつくれたりとか、同じサイズでも陶芸のように一つ一つ個性のある家具がつくれたらいいなということが興味の1つとしてあるように思います。

 

リサーチが可能にするバックグラウンドのあるデザイン

村上氏おすすめ:《sea chair》Studio swine
(参照:http://www.studioswine.com/sea-chair)

村上:日本人とフランス人のデザインチームStudio swineがデザインした《sea chair》という作品です。この作品は漁船にアーティストが乗りこみ、漁船に引っかかったプラスチックの廃ゴミをその場で溶かし、型に流し込んでつくられています。彼らは他にも、サンパウロで落ちているドラム缶や鉄くずと車のバッテリーを合わせ、拾ってきたアルミ缶を溶かし、型にはめてつくるスツールのシリーズ《CAN CITY》もあります。既製品の使い方が、おもしろいなと感じました。僕が既製品を使うときは、モノのカタチをどう活かすかを考えています。そのモノのバックグラウンドはそこまで考えずに、カタチや色がおもしろいかという、マテリアルの組み合わせで見ていると感じています。彼らの作品はストーリー性、メッセージ性を持っていることもありつつ、結果的なヴィジュアルがかっこいい。

中国でおこなわれたプロジェクト《HAIR HIGHWAY》は、人毛のエクステを樹脂の中に閉じ込めた素材でプロダクトをつくっています。それも、完成品がとてもかっこいいのですが、1ヶ月その場所に滞在し、いろいろ吸収した上で、おもしろそうな内容を題材にしてコレクションにしている。自分が既製品を使うときのモノからの影響の受け方と、ちがうベクトルを向いているように思います。また、Studio swineは毎回つくるものが違っていて、自身でつくるものもあれば、外注で頼んでいる作品もあります。その時々で最善なアウトプットを選んでいるのだと思います。

元木:これをピックアップした理由として、彼らの作品からはリユースやアップサイクルとも違う物語的なアプローチを感じますが、既製品を使っているということが大事なのでしょうか。その意味ではゲルチョップさんのプロダクトにも物語を感じられますよね。

村上:僕は、モノのヴィジュアルを追究してつくることが多いんですが、それだけではないとも思っていて、あるバックグラウンドの上にモノが乗っていることの面白さもあると思います。あと、原型を使わない製品のつくり方というところにも興味があります。プラスチックなら溶かしてしまえば一緒でしょというところからカタチをつくっているのがおもしろい。

川勝:DIYのアプローチとしてアッサンブラージュ的なつくり方、見つけてきたものをどうくっつけるかというのが一般的かと思います。それとはまた違う面白さ、素材から追求しているところが面白いですね。

村上:それとやはり面白いのは、リサーチする期間を設けているからこそできている作品だと思います。

 

小さな想いが生み出す状況

モリカワ氏おすすめ《エビスサーキット》

モリカワ:デザインの話から脱線するようでごめんなさい。最近おもしろいなと思ったことが「ドリフト」というカルチャーです。これは日本発祥らしいんですね。『頭文字D』という漫画も世界中で読まれています。そこで福島のエビスサーキットというところがドリフトの聖地をつくろうということで、そこに行くとドリフト用の中古車が安く売られていたり、作業する場所があったり、ボロボロのタイヤが積まれている。外国人が、ここで数百万円をつぎ込み、存分にドリフトを楽しみ帰っていくということが起こっているらしんです。日本にそういう場所があるのかと思うと熱くなっちゃって。こういう現象が起こること自体がおもしろいと感じています。同じようなことで、山での暮らしに憧れた東京の子が、最初はお金がないのでその辺に落ちていた木片で趣味のボルダリングのグリップをつくり、クラフト品のような価格で販売し始めたところ、同じような思いを描く人達の中でちょっとしたムーブメントになったという話。僕はモノを見るより、こういったストーリーに惹かれる。

飯田:先日、人口20人ほどの集落に居を構えて服をつくる居相大輝さんの展示会に足を運ぶ機会がありました。山々に囲まれた小さな村の中に、居相さんのつくる服を村の人々が着ている日常があって、「自分が手がけたものをすぐそばにいる人に届ける」風景にすごくハッとさせられました。

モリカワ:小さな想いがカタチになって、生きていく術になるのが面白いなと思います。

元木:大きな物語ではなくて、小さな物語が生きる術になっていくのは面白いですね。ヒッピーが巨大な資本主義からどう逃げて生活するかを考えた結果インターネットに注目したという話もあり、小さい経済圏とインターネットは相性が良いはずなので、今日的な活動と言えるかもしれません。

飯田:村上さんの話にも通じるかもしれないけれど、居相さんの即興制作を見ていると、服を設計する上で自明とされるような工程を飛ばしているところがあるんです。人それぞれの体の曖昧さに寄り添っているぶん、服づくりの中にある形式から自由になっていて、自分のつくるものや環境を疑ういいきっかけになりました。

 


<ディスカッション>

DIYの概念を広げる

川勝:DIYというと文脈的には1つにデザインの民主化で、みんな自分で身の回りのことをつくればいいという受け入れられ方があると思いますが、お話を聞いていると、かなり自分のつくりたいものをつくるという印象を受けました。

モリカワ:DIYを訳すと、自立、反権力、たのしもうぜ、という自分たちでやってみるという主体がベースにある。昨今、DIYという言葉をよく耳にするのは、東北の震災のときに社会の危機感からフォーカスされたと思いますが、自分たちでできることを自分たちでやってもみるといった見方をすると、世の中の言うDIYの概念よりもっと広くとらえることができる。

西尾:好きなことしかDIYではやらないですね。時々、DIYの家庭教師をやっているんですが、僕が教えるときはホームセンターで材料を集めるところ、カットの指示書を書くところからします。いざ、家具が壊れてしまっても自分で直せるたり、また作れるようにするためです。趣味からライフスタイルにDIYが変わっていくことで、お金の使い方も変わり、選択肢が増えればいいと考えています。どちらかというと、手法をシェアしたいと考えていて、そのために家庭教師としても活動しています。家具屋さんではなく、DIYのプロでいたいという思いがありますね。

モリカワ:均質なものが嫌だと思う気持ちがあって、いかに均質化されないように、上手にならないかということを考えています。あと、方法論に走らないということでしょうか。

 

既製品の位置付け

元木:既製品の話がありましたが、お三方とも、既製品の使い方が独特だと思います。古くはデュシャンから、近年だとdroogdesignなど、既製品の意味を変えてみようという動きがあったと思うのですが、既製品を使うときの意識というのは、あるのでしょうか。

モリカワ:既製品の持つ意味で遊ぶのがひとつ、それから価格至上主義に対してひねた意識もありますね。お店で売っている商品は、仕組みのなかで量産され、へたをすると材料より安い不思議な価格で販売されているモノが多々ありますよね。モノの価値って何?ってなると既製品を材料として捉えてみるのも面白いかもと。

村上:クライアントがモノの素材とのギャップに驚く反応が面白くて、どんどん使うようになりました。既製品の既視感によってお客さんが勝手に盛り上がってくれる。それは、僕にとって気遣いだと思っていて、小さいエンターテイメントを散らばせているといった感じです。

西尾:僕の場合は少し違っていて、DIYの場合は既製品は共有するためのツールだと思っています。僕自身はアーティストではなくデザイナーだと思っているので、出来れば方法を共有して、つくってもらいたいと思っています。モノを買って終わりではなく、それから変化があるような関わり方を作りたいという思いがあります。

村上:既製品を使うことは、ちょっとしたパンク精神があるかもしれません。ホームセンターで揃えることができる材料は、とても安い。でもその材料でそれ以上の価値を持つモノができたることがかっこいいのではないかと思います。やはり既製品ありきでモノをつくるならぎりぎりわかる既視感をつくりたいです。ただストーリーをかかえすぎていても情報が多すぎて鬱陶しいので、ある程度そぎ落とされ、用途しか残ってないようなものをつくりたいと思っています。

元木:GELCHOPさんの既製品の使い方には意味がちゃんと残っていように思います。それに対して、村上さんはカタチできめているように思いました。モノをカタチで見ている。

村上:それはその通りかもしれません。もともとのモノが持っていた機能を考えることがないので、このようになるのだと思います。

 

DIYの中のデザイン

元木:今日は部分の話が多かったと思うのですが、全体についてはどう思われますか。

西尾:ぼくは全体からマテリアルを考えます。なるべく素材からブランドなどのイメージがつかみやすいようにしています。コンセプトも考えながら部分をやります。

元木:西尾さんは、今回素材はこれと決めてから、その素材らしいデティールはどういうものなのかという順番で考えられているように見えますね。

村上:ぼくは逆に部分を派生させながら全体を考えています。部分の組み合わせがかっこいいか。その中でも素材感の統一を一番に考えているように思います。頭の中にある使える木材の種類は4種類くらいしかなくて、その極端に少ない中からまず主人公を選ぶ。その主人公にふさわしい装備を与えていく感じです。そういうふうにまずベースになる素材という制約をつくり、ブランドイメージをのせ、その次に自分のはやりを被せるという順番で考えていますね。

伊東:今日は話を聞いていて「デザインの中のDIY」と「DIYの中のデザイン」の違いを感じました。前者はデザインをする際の与件の中でDIYを選択し、DIYでできることを計画するやり方。後者はDIYそのものを面白がってデザインを構築していくやり方で、両者には作り方からできたものまで明確な差があるように感じます。一方で、皆さんの共通点も強く感じました。大体の場合DIYを選択するきっかけはお金がない、納期まで時間が無いなど条件の厳しさで、その時に「単に安いから、時間がないから」以上の何かがないと、ただの言い訳になってしまう。つまり自覚的にDIYをデザインとして扱おうとすると、必然的にDIYに意味合いを求めることになる。既製品を扱うでも材から新たにつくり出すにせよ、素材の意味の転倒や、文脈や背景といったメタ情報の表現など、意味のデザインを付加しないとDIYはデザインにならない。この「意味をデザインする」と言うのはDIYの重要な特性ではないかと思います。

お客さん:2人とも校則の中で縛られた中で違反している学生。限られた中でこの人に頼めば何ができてくるかワクワクする。何ができてくるかというライブ感だとか生々しさがあって、それが仕事という枠の中でやっている。自由すぎると逆にワクワクしない。状況の中で自分そのものをDIYしていく魅力を感じています。

左から、モリカワ氏、西尾氏、村上氏

<収録:2017年6月28日 happaにて>

 


<編集後記>

今回のゲスト3名はの共通点は簡単に言うと 「デザインだけでなく、自らつくる」だ。一方で、彫刻、建築、絵画とものをつくり始めたスタート地点の違いが、つくり方や考え方に反映されていて面白かった。図面を書かず、現場でまさに絵を描くように素材を配置していく村上、使われ方とつくり方、そして廃棄までを一体的に考える西尾、巷の安い既製品をマテリアルとして加工してその新たな使い道をユーモラスに導き出すモリカワ。そうした違いはありつつも、どれも作ることと考えることが連続しているからこそ実現できる、組み立て方や、仕上げ方、材料の見出し方が追求されたけっか、そのことがデザインの質へとつながることが意識されている。それはざっくりしたディテールや味のある手仕事感を重視したスタイルとしてや、また作り手と使い手の一致を目指すものづくりの民主化のような理念としてDIYではない。

また、一見すると即物的な印象を受けるが、既製品を用いたり仕上げへの関心からは、ものの意味や背後のストーリーの操作こそ重要なのではないかということも気づかされる。村上さんが既製品を選ぶ時は形としてしか見ていないと言いつつ紹介してくれた《sea Chair》でも既製品を一度とかし再整形することで形の意味は消去されるが、一方でそのような操作をしたというストーリーの提示はかなり重視されている。DIYについては60年代のヒッピーカルチャーなどとその「態度」の上で結びつきあるが、他方で彼らのデザインからは、文脈を重視するポストモダン、さらにはデュシャンのレディメイドやダダとの関連を意識した方が良さそうだ。

機械による大量生産を前提としたインダストリアルデザイン、手仕事によって量産されるクラフト、特別な何かのためだけに作られるワンオフというふうに、ものの在り方がその生産様式などと結びつくのだとしたら、デザイナー自らの手でつくられる一品生産というDIYという方法が可能にするデザイン、DIYedなデザインが生まれつつある。そんな予感を感じる夜ではなかったか。

*サポートスタッフ募集

本企画の運営、記事作成を手伝ってくださる方を探しています。
興味のある方は以下までお知らせください。

p.designtable@gmail.com